ESG投資シリーズ④ 気候変動に関するイニシアティブを理解する

ESG投資シリーズ④では、気候変動に関する世界的な取組みについて、整理したいと思います。

気候変動に関する世界的な取組みは歴史があり、近年パリ協定に代表されるように一定の国際的な枠組みが整いつつあります。世界各国において、気候変動に関する原因の調査が進んだこと、危機感が高まっていることが背景にあるのだと思います。

折しも、2018年の夏は、世界各地で異常気象が起きました。直接の原因は、異なるものの地球温暖化が熱波や干ばつの頻度を増やし、それらをより深刻にしていると世界気象機関(WMO)が報告しています。

気候変動に関する問題が、かなり身近な問題として認識されるようになっていると思います。

今回は、気候変動に関する重要な枠組みである「国際気候変動枠組条約」と「TCFD」についてみていきます。

国連気候変動枠組条約とは?

「国連気候変動枠組条約」とは、国際連合が、地球温暖化対策の枠組みを定めた条約です。1992年6月、ブラジルのリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」で採択され、1994年3月に発効しました。

先進国の責務として①90年代末までに温室効果ガスの排出量を90年レベルに戻す。②各国はガスの排出と吸収の目標を作り、温暖化対策の国別計画を策定するというものです。しかし拘束力はありませんでした。

この条約に基づいて、1995年以降、この条約に参加している国が集まる「気候変動枠組み条約締約国会議(COP)」が毎年開催されることになりました。

1997年に京都で行われた第3回締約国会議COP3では「京都議定書」が採択され、2015年のCOP21では「パリ協定」が、採決されました。

京都議定書

気候変動枠組み条約に実効性を持たせるために、1997年に京都で行われたCOP3で採択された「議定書」です。温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、代替フロンのHFC、PFC、六フッ化硫黄)の排出を、2008年から12年の間に先進国全体で5.2%削減することを決めました。先進国のみに義務が課されているというのが、欠点だといわれています。

パリ協定

2015年に合意された「パリ協定」は、2020年度以降の地球温暖化対策の枠組みを取り決めた協定です。
京都議定書から18年ぶりの国際合意です。議定書を離脱した米国や温室効果ガスの排出量が急増している中国、インドを含む196の条約加盟国・地域のすべてが参加しました。(アメリカは、その後パリ協定を離脱しましたが。)

目標は2つです。

①産業革命前からの気温上昇を2度より低く抑え、1.5度未満を努力目標とすること

②21世紀後半には、人為的な排出量と森林などによる吸収量を均衡させること

この目標達成のために、各国に対しては「自主的な削減目標を国連に出すこと」と「達成のため、削減に向けた国内の対策を取ること」を義務づけています。

先進国には発展途上国への温暖化対策の資金援助が義務付けられており、先進国以外の国にも自主的な援助が推奨されています。

また透明性を確保するため、全ての加盟国は排出量、技術供与、資金援助額などの取り組み状況を公開することが要求されています。

TCFDとは?

「気候関連財務ディスクロージャータスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」(TCFD)とは、金融安定理事会(Financial Stability Board(FSB))の要請によって2015年12月に設立された組織です。その目的は、適切な投資判断を促すための気候関連財務ディスクロージャーについて、一貫性、比較可能性、信頼性、明確性をもつ、効率的なディスクロージャーを促す任意的な提言を策定することです。

国連気候変動枠組条約とは別枠のイニシアティブです。

FSBは、2009年4月に設立され、金融システムの脆弱性への対応や金融システムの安定を担う当局間の協調の促進に向けた活動などを行っています。
2017年末時点で、主要25か国・地域の中央銀行、金融監督当局、財務省、主要な基準策定主体、IMF、世界銀行、BIS、OECD等の代表が参加しています。

2015年4月G20財務大臣・中央銀行総裁会合において、FSBに対して、気候関連課題について金融セクターがどのように考慮していくべきか、官民の関係者を招集することを要請されました。

そして、2017年6月にTCFDから最終報告書が公表されました。

最終報告書の構成
①最終報告書、②別冊、③シナリオ分析に関する補足文献の3部構成となっています。

①最終報告書:提言の趣旨、背景、全体枠組みを示したもの。広範なオーディエンス向け
②別冊:提言の実施に向けた実務的な手引き。セクター別補助ガイダンスを含む。
③シナリオ分析に関する補足文献:シナリオ分析を行う際の参考情報をまとめた技術的な補足文書。

TCFDの提案内容
(1)7つの基本原則
1.関連性のある情報を提示する
2.具体的であり、完全性がある
3.明確であり、バランスが取れており、理解しやすい
4.時間の経過のなかで一貫性がある
5.あるセクター、産業、またはポートフォリオの会社同士で比較可能性がある
6.信頼性があり、立証可能であり、客観的である
7.タイムリーに提供される

(2)気候関連リスクと機会の認識

気候関連リスクと機会を財務的に把握する意義は、投資家が財務上の意思決定を行うためには、投資先における気候関連のリスクと機会が将来のキャッシュフローと資産・負債にどの様に影響するかについて理解する必要がある点です。

移行リスクの例:政策及び法規制、技術、市場、評判
物理リスクの例:異常気象災害の増加、降雨パターンの変化、平均気温の上昇、海面の上昇
機会の例:資源の効率、エネルギー源、製品およびサービス、市場、レジリエンス

(3)全セクター共通の提言内容
・ガバナンス(気候関連のリスクと機会に係る当該組織のガバナンスを開示する)
・戦略(気候関連のリスクと機会がもたらす当該組織の事業、戦略、財務計画への現在及び潜在的な影響を開示する)
・リスク管理(気候関連リスクについて、当該組織がどのように識別、評価および管理しているかについて開示する)
・指標と目標(気候関連のリスクと機会を評価および管理する際に用いる指標と目標について開示する)

(4)特定セクター向け補助ガイダンス
金融セクター:銀行、保険、資産保有者、資産運用者
非金融セクター:エネルギー、運輸、材料および建物、農業、食品、木材製品

資産保有者向けの補助ガイダンス
【戦略】気候関連シナリオの使用方法(特定の資産形態への投資の開示等)
【リスク管理】投資先企業とのエンゲージメント手法、投資ポートフォリオの移行リスクに対するポジショニング
【指標】気候関連リスク及び機会に関し、ファンド及び投資戦略毎に用いる指標、保有資産のGHG排出量に関する加重平均単位

資産運用者向けの補助ガイダンス
【戦略】気候関連リスク及びシナリオが商品及び投資戦略にどの様に組み込まれているか、また移行リスクの影響を受け得るか
【リスク管理】投資先企業とのエンゲージメント手法、商品及び投資戦略毎に 気候関連リスクをどのように識別・評価しているか。
【指標】気候関連リスク及び機会に関し、ファンド及び投資戦略毎に用いる指標、保有資産のGHG排出量に関する加重平均単位

(5)マテリアリティと掲載する報告書の関係
殆どのG20メンバー国では公開企業に対して、マテリアルな情報を財務報告に記載することを法的に義務付けている。TCFD提案は開示主体が各国における開示要件に対してより効果的に対応できることを後押しすることを意図しています。

気候関連リスクはすべての業種に影響を及ぼすことから、ガバナンスとリスク管理については、(マテリアリティ評価を待たず)あらゆる業種において年次財務報告への掲載を推奨しています。

気候関連リスクを自社にとってマテリアルと位置づける企業は、戦略及び指標と目標についても、年次財務報告への掲載を推奨しています。

まとめ

ESGのうちE (Envoirnment)のトピックのうち、気候変動に関する社会の関心は得に高くなっています。SDGsでも「13.気候変動に具体的な対策を」で目標として掲げられています。また、「パリ協定」によって国際社会の合意事項となっていることから、企業は経営を行う上で、また機関投資家は投資する際に、考慮することが必須の事項となっていると思います。

 

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